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  • 男の髭は諸刃の刃である

    男の髭は諸刃の刃である

    私の朝は早いみたいな言い方だが、僕の髭は濃い。

    よく九州の人ですか?とか聞かれることもある。

    それは多分に顔が濃く、髭が濃いからであろう。

    髭というものは難しいものだ。

    髭が濃いと毎朝剃らなきゃいけないし、剃ったら剃ったらでじょりじょりしてちょっとかゆくなるし、夕方になったら伸びてくるしで、なにかと面倒くさいのである。

    髭が濃いと、ちゃんと毎朝剃っていても上司から「masakuroy、いつ髭剃ったの〜?w」とか冗談で聞かれて適当にあいそ笑いを返すのだが、内心では「そんなに濃いのかな・・志村けんのコントみたいにマジックで書いた感じに青く見えてるのかな・・・」と激しく動揺し若干傷ついているのだ。

    全然髭濃くなくて肌つるっつるの人とかうらやましいと思うこともあるし、髭の濃さを隠すために「いやー風邪気味で・・・」とか「いやー早くも花粉症発症しちゃったみたいで!」とかいって伊達マスクをしてしまうこともある。

    しかし髭があったほうがいいと思うこともある。

    海外では大人の男は髭が濃いほうがダンディーだという風潮もあるし、実際日本人でも髭が濃いほうが男らしい・世界では認められるというイメージがある気がする。

    俳優の浅野忠信が好きなので、あのダンディーな髭にあこがれたりする。

    長期の休みでは髭を剃らないから結構伸び放題になって「おっなんかちょっと中東の男っぽくなってエキゾチックでいい感じじゃん」とか勝手に思えたりするのだ(周りはむさ苦しいと思ってるかもしれないが)。

    髭を最初に意識したのは高校生の時である。

    思春期だったので、同世代と比べてなんとなく髭が濃いことが気になりだした僕はなんとかしたかった。

    そこで目に飛び込んできたのが「週刊少年ジャンプ」の裏表紙に載っていた「これで君の濃い青ヒゲもピッカピカ!」みたいなコピーの髭脱毛剤だった。

    世間しらずだった僕は「これだ!!」と飛びつき早速通販で注文した。たしか7,000円くらいしたと思う。

    丹念に塗込んでいくことをしばらく続けたが全然効果は現れなかった。

    「だまされた・・・」masakuroy、18歳。 青春のほろ苦い思い出だ。

    その後、ヒゲが濃いことへのほの暗いコンプレックスを抱え続けた僕だが、ふとしたきっかけでコペルニクス的発想の転換に至った。

    「そうだ・・剃るから濃くなるんじゃね? これ抜いちゃえばいいんじゃないの?」

    それから僕は時間があればヒゲを抜くようになった。ピンセントで丹念に抜くこともあれば手で直接抜いてしまうこともあった。

    最近はさすがにしないが、手持ち無沙汰になるとヒゲを手で抜いていて、気付くと自分の足下に抜かれたヒゲが大量に散乱していることもしばしばあった。

    ヒゲを抜くのはもちろん痛い。しかしコツを覚えれば意外と簡単に抜けるようになる。

    まず、ヒゲを抜く前に顔をしっかり洗い、濡らして絞った手拭いを電子レンジに入れて一分。

    蒸れてホッカホカの手ぬぐいを手早くヒゲに押しあててしっかりと蒸らす。そうして髭を柔らかくしてからお手元にピンセット、手鏡、抜く髭を落とす台座にティッシュを引けば準備完了だ。

    あとはこれから少々の痛みに耐える心の準備さえあれば、ひたすら抜くのみである。

    ヒゲを抜くにもポイントがあって、鼻の下の線(人中というらしいです)に生えてるヒゲを抜くのは激痛だし、くちびるとあごの間にあるヒゲを抜くと80%くらいの確率で出血する。

    一時期は濃いヒゲになやむ男性向けに「ヒゲセルフピッキングの伝道師」としてセミナーを開催して一儲けしようかなどと妄想したこともあった。

    ヒゲを抜くのはよくないと言われることも多いが、デメリットを感じた事はあまりない。

    たまにヒゲ抜いた所からばい菌が入ってニキビっぽいのができてしまい、「あれ?鼻の下に米つぶついてるよ?」とか言われたこともあるが、そんなのはご愛嬌だ。

    今でも大体週末にはヒゲを抜いている。すると月曜からヒゲを剃るとき肌のノリもいいし、青さもあまり気にならなくなり気分もノってくるのだ。上司からも「masakuroy〜 髭www」などと突っ込まれるリスクも回避できるのである。

    たまに週末ヒゲを抜く余裕がなかったりすると「やべ〜今週ヒゲ抜けなかった・・・一週間テンション下がるわ〜」となってしまうくらい大切な儀式なのだ。

    でも痛いし、毛穴も傷つくし、髭抜いた後のティッシュの残骸は気持ち悪いので、基本的にやらないにこしたことはない。

    青ヒゲ男子の悩みは深いのだ。